価値観、常識は生きていく中で構築され続けるものである、と私は考える。日常における身の回りのひとつひとつが自らの"あたりまえ"を作り続け、たまに壊され、そしてまた作られる。自身のそれが壊された瞬間を、私はカナダとアメリカで目の当たりにした。
2019年の夏、修士1年生の私はカナダのプリンス・エドワード島(以下、PEI)にいた。当時、英語がはちゃめちゃに出来ず、学業に支障をきたしていた状況をどうしても変えたいと決意し、藁にもすがる思いで2週間の研修に参加していた。
トロント経由でPEIに到着し、爆睡をこきつつも好奇心旺盛な私はホームステイ先のお家の周辺を歩き回った。本屋さんやタイ料理店、ドラッグが置いてそうな雑貨屋さん、Tim Hortons、現地の皆さんとっては何気ないご近所も私にとっては冒険の連続であった。
そんな中、フラッと入ったスーパーで、私は"ヤツ"に出会った。
GREEN TEA、緑茶........何かがおかしい。レモン、レモン!?パッケージを二、三度見した。意味が分からなかった。レモン、紅茶には入れたことがあった。いや、でも緑茶と紅茶の違いは発酵度合いの差だって聞いたことがあるし、緑茶はきっと広義の紅茶でしょう?と訳の分からないことを考えていた。好奇心が怖さに勝り、つい購入してしまった。
帰国後、少しビクビクしながらレモン緑茶を飲んだ。お湯を注いでいる最中、既にレモンの香りが湯気と共に立っていた。
飲んだ。紛いもなく緑茶であった、レモン風味の。レモンの存在感はしっかりあった。悪くはないかも、しかし日本の雑貨屋さんで見つけたら面食らって買うのに躊躇するだろうなぁ、などと考えつつ私はレモン緑茶を飲み続けた。
"ヤツ"との再会はすぐの出来事であった。2020年の初春、新型コロナウイルスが世界に広がりつつある中、私はニューヨークにいた。修士論文の資料集めをしていた。遊びじゃねぇから!とイキリ散らしながら渡航したものの、休日は資料館も閉まっており、私は観光と称し、マンハッタンやその周辺を地下鉄を駆使しながら歩き回っていた。
ブルックリンを放浪していた際、iPhoneの充電器がへし折れ、脆弱なiPhone6Plusのバッテリーが寒さで数パーセントを切る極限状態に陥った。どうにかしなきゃと雑貨屋に飛び込み、充電ケーブルを探していた私は、目を疑った。
"ヤツ"がいた、たくさんの仲間と一緒に。GREEN TEAのバリエーションの豊かさを前に私は立ちつくした。レモン、お前、PEIのスーパーにいた時はプレーンのあいつと2人きりだったじゃん........。ジャスミン、カモミール、ベリー。カルチャーショックであった。ワシントンD.C.で飲んだGreen Tea(with GINSENG and HONEY、小っちゃく書くな!)がゲロ甘かった瞬間以上の衝撃であった。ビビりすぎて充電ケーブルを買った私は逃げるように店を後にした。
それでもやはり自身の好奇心に負け、後日再び同シリーズのGREEN TEAを買ってしまった。レモンと、そしてベリー。控えめなチョイスである。
次、北米へ遊びに行く際は、勇気を振り絞って全種類買ってみたい。飲み比べをしよう。ねこちゃんも一緒に連れて行って様々な出会いの瞬間を一緒に過ごしたい。
〜さいごに〜
先ほど登場したワシントンD.C.にて出会ったAriZona製のGreen Tea(with GINSENG and HONEY)、飲んだ瞬間甘すぎて緑茶ちゃうん!?とショックを受けた一品である。
最初ペットボトルのそれを飲みショックを受けた後、バカ過ぎて缶バージョンはきっと普通の緑茶に違いない!と謎に都合のよい解釈を展開し購入、飲み、そして自爆した。
コンビニにて、「ペットボトルはトチったけど、缶でリベンジする!」と自信満々に言うバカな私に対し、「それ中身きっと同じだよ....?」と知らないお姉さんは言った。お姉さんの言う通りであった。